虹の橋を渡った愛犬に、今日も何かしてあげたい。
おやつを供えて、香りを焚いて、話しかける。
umuを見送ったあとに始まった毎朝の時間が、iicoのお香を作るきっかけになりました。
犬のおやつを作る私たちが、なぜ線香を選んだのか。
その背景にある想いを、綴ります。
一緒にいられた時間の、その先まで。
あの子と過ごした時間よりも、
これからひとりで生きていく時間のほうが、
げんなりするほど長い。
だからこそ、
「一緒にいられた時間の先まで寄り添えるもの」を作りたかった。
暮らしの中に小さく灯る“祈りのような存在”として、
iicoのお香が生まれました。
線香を選んだ理由
その発想のきっかけは、umuが気配になった日々と、供養会でした。
リビングの窓際に、静かに鎮座しているumuの祭壇。
umuがいなくなったその日から、毎朝、新しいおやつと一緒に、新しい香りを焚く習慣が始まりました。
それは、umuと話をして、一日を始めるための大切なリセットの時間。
そしてあの日、会場に漂っていたお線香の香りに包まれた、あたたかな空間。
お焼香という所作が、心を鎮めてくれる安心感。
涙が静かに整うような、あの子を感じる不思議な時間だった。
線香の香りに包まれた空間は、ほんの少しさみしくて、けれどあたたかい。
香りを焚くたびに、自分と向き合うゆっくりと流れる時間は、
「もう会えないイイコとともに過ごす」こと。
そんな大切な時間に寄り添いたいと思ったことがきっかけです。
そして、祈りの香りでありながら、暮らしの香りでもあります。
大切な記憶とともに、いまを生きる時間にも寄り添ってくれる。
そんな“ふたりのための香り”として、この線香をつくりました。
最初の香りと、デザインについて
最初の香りには、ラベンダーを選びました。
清潔で穏やかで、どこか懐かしい。
一緒に歩いた散歩道や、
一緒に食べたiicoのクッキーを思い出す。
私にとって、失うことと生きることのあいだにある、
静かな希望を感じさせてくれる香りでした。
デザインは、静けさをそのまま形にしました。
試験管の中に紙を巻き、小さな文字を添えて。
飾らないぶん、手に取った瞬間に“香りそのもの”が届くように。
一緒に生きていくための香り
iicoの原点は、いつも「食べる」ことにありました。
食べるという行為の奥には、
“生きる時間をわかちあう”という本質がある。
そして線香は、その延長線上にあると思っています。
食べられないけれど、心を満たす“香りのごはん”のようなもの。
あの子が旅立ったあと、線香の香りは“亡き子の食べもの”といわれていることを知りました。
それを知ってから、香りを灯すことが、
あの子と心をつなぐ行為のように感じるようになったのです。
香りは、記憶と同じ場所に届きます。
手のひらに残る温もり、朝の光の色、あの子の寝息。
それらがふっと蘇る瞬間に、
悲しみは少しだけ、やわらかいものに変わっていく。
私にとって、香りを焚くことは、
今もあの子と一緒に生きていくための時間なのだと思います。
一周忌に、もうひとつの香りを。
2026年7月9日。
umuの一周忌に、白檀のお香を発売しました。
なぜ、この日にもうひとつの香りを届けたかったのか。
今思えば、
一年前と同じ想いが、今も続いていることを、
形にしたかったのかもしれません。
一年が経ったからといって、
会いたい気持ちがなくなるわけではなくて。
新しい景色を見れば、「umuにも見せたかったな」と思うし、
美味しいものができれば、「食べさせてあげたかったな」と思う。
きっとこの先も、そう思い続けるのでしょう。
そんな毎日の中で、
凛としたラベンダーの香りと対になる、
落ち着いた香りを、手にしたくなりました。
選んだのは、白檀。
私の中には、
よく知っている、高貴な香りというイメージがありました。
けれど、この白檀は、
思っていたよりも軽やかで、
木のぬくもりを感じる香りです。
あの子を想う時間に、
その日の自分が手に取りたい香りを。
ラベンダーと、白檀。
ふたつの香りになっても、
その始まりにある想いは、同じです。
一緒にいられた時間の先まで、寄り添えるものを。
命日にも、何でもない一日にも。
愛犬の命日や月命日。
誕生日や、一緒に暮らし始めた日。
いつもより、あの子のことを想う日があります。
けれど、会いたくなるのは、
そんな特別な日だけではありません。
何でもない朝に。
ふと、手が空いたときに。
美味しいものができたときに。
今日も、おやつを供えて、香りを焚く。
あの子と話をして、一日を始める。
私にとっての日々の供養は、
そんなふうに、暮らしの中に続いています。
想いは、暮らしの中に続いていく。
一緒にいられた時間は、いつか終わる。
けれど、想いは、暮らしの中に続いていく。
iicoは、犬と人が共に生きたその時間の先まで、
寄り添えるブランドでありたい。
「思い出すたび、少しやさしくなれる」
そんな存在でありたいと思っています。
あの日から、手を動かし続けた先に、
香りがあって、旅があって、手紙があって。
振り返ると、そのどれもが、
umuと歩いてきた時間の続きでした。
悲しみがなくなったわけではありません。
今でも、「umuに会いたい」と思う日はやってきます。
でも、それでいいんだと思えるようになってきました。
姿は見えなくても。
抱きしめることはできなくても。
私は今でも、umuの母でいたい。
この香りが、あなたと、あなたの大切な子の時間に、
小さな灯りをともしますように。
そして、あの子の記憶が
今日もあなたを、やさしく照らしていますように。
イイコのお香|ラベンダー
イイコのお香|白檀