一匹の犬に生き方を教えられた女の話

iicoの読みもの 
はじめまして。犬のおやつ専門店iico(イイコ)のオーナーをしている浅田姉こと、浅田雅子と申します。
小売業・ペット業界ど素人が2020年7月に犬のおやつ専門店iicoを立ち上げました。

iicoの読みものでは主にiicoの運営、そして一緒に暮らしているフレンチブルドッグumu(うむ)との日常を通して感じたことや出来事を書き綴っていきたいと思います。

第一回目の投稿は”1匹の犬に生き方を教えられた女の話”。自己紹介を兼ねて、まずは元の職業やumuとの馴れ初め、そしてiicoに繋がるルーツをまとめてみました。最後までお読みいただけると幸いです。

1.デザインに埋もれていた20代

仕事一筋仕事人間だった女がいた。
職業はインテリアデザイナー。店舗やホテルなどの商空間の設計デザインが主な仕事だ。小さいころから、頭の中にイメージしたコトを文章や形にすることが好きだった。アートやファッションの世界に憧れたけれど、せっかくなら大きな造形で人を魅了できたらと、建築家になることを決めた。そしてその思いは段々と視覚で楽しむ建築物という造形から、空間ならではの五感で感じる独特の世界観を創っていきたいという思いに変わったのだった。

たまに人から「インテリアデザインの仕事ってかっこいいですね!」なんて褒めていただくけれど、実際は実に土臭いと思う。特に20代の会社勤めだった頃は昼も夜も会社。寝るのも忘れて徹夜は当たり前。家に帰るのはシャワーと寝るだけの日々。もちろん土日も仕事三昧。オンとオフなんていう発想がなかった。仕事から離れて街を歩いても結局デザインを目で追ってしまうし、それはどこに行っても変わらないから。けれど、本人はそれでよかったし不満に感じるなんてこともなかった。好きなことをしている充実感と作っていく過程の充足感、それに完成したときの達成感は刺激的でとても楽しかった。
そんな昼夜逆転の生活はフリーランスになってからもさほど変わりはなかった。忙しければ徹夜もしたし、日本各地へ飛び回った。

2.フレンチブルドッグumuとの出会い

それが、1匹の犬との出会いで大きく変わる。
犬との出会いは遡ること5年前だ。その頃、一人暮らしのころから飼っていたうさぎと実家で18年生きた愛犬はなが次々と虹を渡り自称『もふもふ恋しい病』を患っていた女は、街でペットショップを見つけると吸い寄せられるように入っていき、ひたすら目で癒され触って癒される日々を送っていた。
そんなある日、近所にできたばかりのペットショップを覗くとその子はいた。ケージの中でうとうとしているその子は額に小さな傷があった。店員さんに聞くと同じケージに入っていた男の子にやられたんだとか。
しかしそんな傷など気にならないくらいその子はかわいかった。
抱いてみると小さくてあったかい。
今でもなぜこの子だったのかわからない。ただ、この子だった。
今までもたくさんいろんなかわい子ちゃんを抱いて愛でてきたけれど「あ、この子だ。この子と一緒に暮らしたい」と心から思ったのは生まれて初めての経験だった。

帰って早速、彼に興奮しながら報告し、一緒に住みたいと伝えたところ言われたのはただ一言。「そんなのはよくある話、冷静に考えて。今じゃなくてもいいでしょう」と。確かに、一緒に暮らす子を迎えるときには一緒にブリーダーのところを回って決めようと話していたので先走っていると感じられても仕方のない話。
それでも名残惜しく忘れられない女は、毎日そのペットショップへ会いに行った。自分の気持ちに間違いはないか、キチンと育てる覚悟があるのか何度も自問自答しながら。でもいくら考えても答えは変わらなくて。
家族にするならこの子がいい、いやこの子しかいない!と、彼に伝え説得し、最後は彼が折れる形で一緒に暮らすことに。
お迎えする前から、何冊もしつけ本を揃えて読み込み「いい子に育ったね」と彼に言ってもらえるように…と準備を進めた。

迎えた日、その子は彼に『umu(うむ)』と名付けられた。
ただ一つ、一緒に暮らし始めてよくわかったことがある。それは事前準備したマニュアルは全く無意味だったっていうこと。お迎えした後も、本やインターネットの情報に何度も頼ろうとしたけれど、結局その子と向き合って初めて家族になれるんだって気づいたのは、ずいぶん経ってからのことだった。

3.umuと一緒に暮らしはじめて

umuを迎えてから、生活は一変した。
まず当たり前だけれど、朝晩決まった時間にごはんを与えなくてはならない。どんなに夜中まで仕事をしていても決まった時間には起きる習慣がついた。それから散歩の時間ができた。
今まで気づかなかった緑道を見つけたり、自然を見て季節を感じるようになった。気分転換にもなったし、頭の中のデザインを纏める時間にもなった。
仕事の仕方も、ダラダラと長時間やることがなくなった。
決めた時間にガツッと集中することで効率も成果物の内容もよくなった。

それから休日の過ごし方も変わった。
休日は公園や犬と一緒に過ごせる場所へ行く。自然豊かな郊外や、犬連れOKなカフェを見つけるのが楽しみになった。年に何度か行く旅行も犬連れできる宿や観光名所を探す。全ての行事が犬を中心に進んでいく。

またコミュニティも世界が広がった。
umuと一緒に暮らすようになって始めたInstagramでは同じ犬種を中心にいろいろな方と交流し、同じような不安や悩みなどを打ち明けてなんでも話せる友だちができた。情報や知識を増やすこともできた。よく散歩で行く公園でも散歩仲間ができた。仕事・世代といった垣根を越えたお友だちができた。

全てumuのおかげ。umuのおかげでどんどん世界が広がっていく。

一緒に暮らし始めても、仕事の関係でどうしても外出はしなければならない日もある。したくをしているとそれが一緒に出かけられる準備なのかそうでないのか、umuは察知する。そして仕事だとわかると諦めたようなちょっと寂しいような空気を出す。女はできる限り早く帰ってくるね!と言って家を後にする。留守中のumuは、部屋のおもちゃも一切動かさず、必要最低限の水分補給とトイレだけ済ませているらしい。(umuはボールがおやつよりも好きなのに!)留守中のいたずらは今まで一度もない。
仕事が終わって帰宅すると、自分のベッドでただただ眠っていたumuが出迎えてくれる。そんなumuを見るたびに、この子の世界は私と一緒にいて初めて動き出すんだなとつくづく感じる。そして、自分の行きたいときに行きたいところへ行くことのできないこの子の希望は、できる限り叶えてあげたいと思う。

4.フレンチブルドッグと手づくりごはん

umuはフレンチブルドッグ。短頭種で短毛。皮膚も弱い。病気になりやすい犬種といわれている。手作りごはんを作り始めたのは、お友だちが病気になって手作りごはんを食べるようになったことがきっかけ。少しでも長生きできるようにと、本を頼りに作りはじめた。
作りはじめるまでは続くかな…と思っていたのも杞憂だった。
ガツガツと美味しそうに食べるのを見ると、旬の野菜を選んだり肉の種類を変えてみたりと工夫を始めるようになる。そして手づくりごはんの成果も見えはじめる。まず、毛艶が変わった。肉球もウルウルになった。
そして一番驚いたのは通院回数が劇的に減った。手づくりごはんにする前に比べて約3分の1の回数。季節の変わり目は皮膚の炎症が毎度起きていたのがなくなった。
ただ一つ、気になることがあった。
それは本の通りに作っているのに、体重の増減が激しいこと。私たち人間と比べて小さいこの子が増減があまりにあるのは栄養素の過不足が起こっているんじゃないかと不安になる。

そこで、栄養計算の方法を学ぶために『ペット管理栄養士』の資格の勉強を始めた。元々、自分自身の健康や美容に若い頃から疎くて仕事だけに突っ走ってきた女には全くの未知の世界。それでもumuの健康のためならとがんばれた。そしてumuの運動量や年齢などを考慮した栄養計算式に基づいて適量を与えていたら体重は安定し、前にも増して毛艶がよくなり毛量が増えた。
そして周りの友だちや散歩の途中で出会う方に、毛艶について褒めていただく機会が増えるようになった。手づくりごはんに切り替えたことを伝えると「すごい、私にはできない」や「代わりに作ってほしい」なんて声をいただくようになった。

5.2020年、動き出す。

そんな中、2020年世界的に生活は激変した。
犬連れでの外出もなかなか思うようにいかなくなり、会いたい人に会うことも難しくなった。
それでも、家族みんなで笑っていられたのはumuのおかげだと思う。きっと犬とともに暮らす人、暮らすことは難しくても周囲の犬に癒されている人にとっても犬の存在は何よりも大きくあたたかいものだ。
犬は裏切らないから。
犬に恩返しをしたい、と思うのは既に自然な流れだった。

犬のしあわせは、美味しいものを食べているとき、そして家族の笑顔を見られることだと思う。それを同時に叶えるお手伝いができたらと思いはじめる。それが”犬のおやつ専門店iico(イイコ)”のルーツだ。

仕事一辺倒だった女は、1匹の犬と出会って人生の彩りを見つけた。
そして今、iicoのオーナーとして、日々犬のため人のため、そして地球のために何ができるか考えながらクッキーを焼いている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第二回目は122618時、浅田妹による「無駄な情報はやたら覚えているのに、肝心なことは忘れてしまう人の話。」をお届けいたします。お楽しみに!


Leave a comment

×