犬のおやつを選ぶとき、原材料や添加物、カロリーなどを確認する人は多いかもしれません。
では、その原材料がどこから来たものなのかまで考えたことはあるでしょうか。
肉を使った犬のおやつには、牛肉、豚肉、鶏肉、鹿肉など、さまざまな種類があります。
もちろん、どの肉がよくて、どの肉が悪いという単純な話ではありません。
ただ、私たちが犬のおやつに使う「肉」も、農業や畜産、地域の環境、野生動物の管理、資源利用とつながっています。
この記事では、犬のおやつと環境の関係、鹿肉やジビエがペットフードに活用されている背景、そしてiicoが創業当初から鹿肉を選んでいる理由について考えます。
犬のおやつと環境問題は関係ある?
結論からいえば、犬のおやつも環境と無関係ではありません。
犬のおやつを作るためには、原材料の生産、加工、包装、保管、輸送など、さまざまな工程があります。
肉を原材料にする場合、その背景には畜産や食肉加工もあります。
畜産では、家畜の飼料を生産するための農地や水が必要です。また、牛などの反芻動物は消化の過程でメタンを排出し、家畜排せつ物の管理からもメタンや一酸化二窒素などが発生します。
ただし、
- 家畜肉を使わなければ環境にいい
- 鹿肉なら必ず環境負荷が小さい
と単純に言い切ることはできません。
原材料の生産方法だけでなく、加工、冷蔵・冷凍、輸送、廃棄などによっても環境への影響は変わります。
鹿肉を遠方から運べば、輸送に伴う負荷も発生します。
それでも、犬のおやつの原材料を考えるとき、
すでに地域で起きている課題の中から生まれた資源を活用する
という選択肢があります。
そのひとつが、捕獲された鹿の肉です。
日本では、なぜ鹿が捕獲されているの?
日本では、シカやイノシシなどの野生鳥獣による農作物被害が問題になっています。
鹿が増えることで起きるのは、農作物への被害だけではありません。
森林の下草や若い木が食べられることによる植生への影響、土壌流出、生態系への影響、車両との衝突事故など、地域によってさまざまな問題が発生しています。
北海道でも、エゾシカの生息数や分布域の拡大により、農林業被害や交通事故、強い採食や踏み付けによる生態系への影響が課題になっています。
そのため、地域ごとの状況に応じて、個体数管理や被害対策の一環として鹿の捕獲が行われています。
ここで、もうひとつの課題が生まれます。
捕獲された鹿を、その後どうするのか。
捕獲された鹿を「資源」として活用するジビエ
ジビエとは、食材として利用される野生鳥獣の肉を指す言葉です。
日本では、鹿やイノシシなどが代表的です。
農作物被害や生態系への影響などを背景に捕獲された野生鳥獣について、肉だけでなく、皮、骨、角などを地域資源として活用する取り組みが進められています。
捕獲された個体を利用できなければ、埋設や焼却などの方法で処理する必要があります。
捕獲する。
処分する。
それだけで終わらせるのではなく、食肉やペットフードなどに利用する。
ジビエの活用には、捕獲された命を地域の資源として可能な範囲で活かすという側面があります。
ただし、すべての捕獲個体を食肉として利用できるわけではありません。
捕獲方法、捕獲後の状態、処理施設までの距離、搬入までにかかった時間などによっては、食用やペットフード用の原料に適さないこともあります。
そのため、捕獲数を増やすだけでなく、利用に適した捕獲・運搬・処理体制を整えることも重要です。
ジビエはペットフードにも活用されている
ジビエというと、レストランで提供される鹿肉料理を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし現在、ペットフードもジビエの重要な活用先のひとつです。
農林水産省が公表している2023年度の統計では、ジビエ利用量2,729トンのうち、ペットフード向けは866トンでした。
全体のおよそ3割が、ペットフードとして利用されていることになります。
捕獲された鹿肉を犬のおやつやペットフードとして活用することは、これまで十分に利用されていなかった資源の出口を増やすことにもつながります。
犬のおやつは、犬が喜ぶためのものです。
けれど原材料の選び方によっては、地域で捕獲された鹿を資源として活かす方法のひとつにもなります。
鹿肉のおやつなら、すべてサステナブルなの?
「鹿肉だからサステナブル」「ジビエだから環境にいい」と一括りにすることはできません。
鹿肉がどこで捕獲されたものなのか。
どのような目的や状況で捕獲されたのか。
捕獲後、どのように運搬・処理されたのか。
どこで加工され、どのように商品になったのか。
商品によって背景は異なります。
また、環境負荷を考えるなら、冷凍保管や加工、包装、販売地までの輸送も無視できません。
大切なのは、鹿肉という原材料名だけでサステナブルだと判断するのではなく、
なぜその素材が選ばれ、どのように利用されているのかを見ること。
鹿肉は、あらゆる意味で完璧な素材ではありません。
それでも、地域で捕獲された鹿を廃棄だけで終わらせず、食肉やペットフードとして活用することには、ひとつの資源利用としての意味があります。
野生の鹿肉だからこそ、衛生管理が重要
鹿肉は、飼育環境や食肉処理工程が管理されている家畜の肉とは異なり、野外で捕獲される野生鳥獣の肉です。
そのため、捕獲時の状態、捕獲方法、内臓の損傷、施設までの運搬時間、搬入後の処理など、複数の段階で適切な判断と衛生管理が必要になります。
厚生労働省の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」でも、野生鳥獣肉には家畜とは異なる処理工程があるため、独自の衛生管理が必要だとされています。
北海道では、エゾシカが衛生的に処理され、食肉として流通するための基準として「エゾシカ衛生処理マニュアル」が設けられています。
このマニュアルでは、捕獲から運搬、受け入れ、解体、加工、保管まで、各工程における確認事項や衛生措置が示されています。
鹿肉のおやつを選ぶときは、鹿肉が使われているという事実だけでなく、次のような背景も判断材料のひとつになります。
- どこで捕獲されたものか
- 捕獲後、どのように搬入されているか
- どのような施設で処理されているか
- 衛生管理や検査が行われているか
iicoが創業当初から鹿肉を選んでいる理由
iicoでは、創業当初から鹿肉ジャーキーを作っています。
理由は、鹿肉の栄養的な特徴だけではありません。
私たちはブランドを始めるときから、
犬のおやつに使う肉を、家畜肉だけに限定したくない
と考えていました。
牛肉、豚肉、鶏肉は、私たち人間の食生活でも広く利用されている身近な食材です。
一方で、畜産と環境負荷の関係や、家畜以外にも活用できる肉があることを知る中で、犬のおやつまで当然のように家畜肉だけを使う必要があるのだろうか、と考えるようになりました。
そこで出会ったのが、捕獲された鹿を資源として活用する取り組みです。
農作物や森林、生態系などへの影響を背景に捕獲される鹿。
その命を処分だけで終わらせず、犬のおやつとして活かすことができる。
それなら、iicoが肉のおやつを作る意味のひとつになるのではないか。
そう考え、創業当初から鹿肉を選んでいます。
iicoが使用しているのは、北海道・稚内のエゾシカ
iicoの鹿肉ジャーキーには、北海道・稚内から仕入れたエゾシカの肉を使用しています。
鹿肉を選ぶだけでなく、どのように捕獲され、どのような管理のもとで処理されているのかも、仕入先を選ぶうえで大切にしていることです。
iicoの仕入先では、専属のハンターが捕獲したエゾシカを、定められた時間内に処理施設へ搬入しています。
搬入されたエゾシカは、衛生管理責任者のもと、北海道の「エゾシカ衛生処理マニュアル」に基づいて処理されています。
また、仕入先では、次のような検査を定期的に実施しています。
- 使用する水の水質検査
- 調理器具などの拭き取り検査
- 部位ごとの肉片を用いた検査機関での微生物検査
- 放射能測定
微生物検査では、大腸菌群、大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O157・O111・O26、サルモネラ属菌、一般生菌などを検査対象としています。
これらの検査を行っているからといって、食品やペットフードの安全性を無条件に保証できるわけではありません。
しかし、野生の鹿肉を扱ううえで必要となる衛生管理や検査に継続して取り組んでいることは、iicoが仕入先を選ぶうえで確認している重要な要素です。
私たちは、単に「鹿肉であること」だけではなく、
どこで捕獲され、どのように処理された鹿肉なのか。
その背景まで確認したうえで、原材料を選んでいます。
iicoの鹿肉ジャーキーは、鹿肉だけで作っています
iicoの鹿肉ジャーキーの原材料は、鹿肉のみです。
調味料、油、甘味料などは加えていません。
仕入れた鹿肉をミンチにし、まとめて約3mmの厚さに伸ばしてから加熱しています。
この製法を選んでいる理由のひとつが、硬さを調整しやすくするためです。
鹿肉をそのままスライスして乾燥させると、部位や繊維の方向、厚さによって硬さにばらつきが出ることがあります。
iicoでは一度ミンチにすることで肉の状態を均一にし、約3mmの厚さに整えています。
目指しているのは、
女性が片手でパキッと割れる、チップス程度の硬さ。
小さな犬には細かく割り、大きな犬には少し大きめに。
一枚のおやつを、その犬の体格や食べ方に合わせて調整しやすい形にしています。
なお、鹿肉ジャーキーは、iicoの定番おやつの中で唯一の犬専用おやつです。
iicoでは、人と犬が一緒に食べられる設計のおやつも多く作っていますが、鹿肉ジャーキーはペットフードとして製造・販売しています。
鹿肉を選ぶことは、家畜肉を否定することではない
iicoが鹿肉を選んでいるのは、牛肉、豚肉、鶏肉などの家畜肉を否定するためではありません。
家畜肉にも、それぞれの栄養的な特徴や食文化、産業としての役割があります。
また、すべての犬に鹿肉が適しているとも限りません。
体質、アレルギー歴、持病、現在食べているフードとの組み合わせなどによって、適したおやつは異なります。
大切なのは、ひとつの素材だけを正解にすることではなく、選択肢を持つことです。
- 家畜肉とは異なるたんぱく源として鹿肉を選ぶ
- 捕獲された鹿を資源として活用する商品を選ぶ
- 原材料の産地や処理工程を確認して選ぶ
鹿肉のおやつは、そのような選択肢のひとつです。
犬のおやつを選ぶことも、小さな「選択」
犬のおやつひとつで、環境問題が解決するわけではありません。
鹿肉を選べば、すべてがサステナブルになるわけでもありません。
それでも、犬のおやつを選ぶときに、
「これは何から作られているのだろう」
「なぜ、この素材が使われているのだろう」
「どのように商品になったのだろう」
と考えることはできます。
栄養。
原材料。
食べやすさ。
衛生管理。
そして、その素材が生まれた背景。
犬のおやつを選ぶ基準は、ひとつでなくてもいい。
鹿肉やジビエは、その選択肢のひとつです。
iicoはこれからも、
犬が喜ぶことと、私たちが納得して作れること。
その両方を考えながら、素材と向き合っていきます。
鹿肉のおやつについて、もう少し知りたい方へ
鹿肉そのものの特徴や栄養、犬に与える際の注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
犬に鹿肉をあげても大丈夫?鹿肉の特徴とおやつの選び方
毎日のおやつの量や与え方について知りたい方はこちら。
犬のおやつは毎日あげてもいい?
北海道・稚内のエゾシカで作る鹿肉ジャーキー
原材料は鹿肉のみ。ミンチにした鹿肉を約3mmの厚さに伸ばし、片手で割りやすい硬さに仕上げています。
iicoの鹿肉ジャーキーを見る